このブログは移転しました。→http://www.masuseki.com/wp/ 300 秒後に移動します

感想文/展覧会亜欧堂田善の時代 | 06.04.01 (土)

亜欧堂田善の時代 - 府中市美術館

denzen_00.jpg

  • 府中市美術館企画展:『亜欧堂田善の時代』
  • 3月4日(土) ~ 4月16日(日)
  • 休 館 日 毎週月曜日、3月22日(水)
  • 開館時間 午前10時-午後5時(入場は4時半まで)
  • 料金 一般600円 高校生・大学生300円 小学生・中学生150円

観てきました。凄く良かったです。素晴らしかった。

入るなり、スキャンして引き伸ばした3m大の複製画パネルがドーンと並べてあって、 ウゲッとなったんですが、全部観て回ったら実に濃い作品が集められた展示内容でした。

版画というのはどうしても作品が小さくならざるを得ないので、 あえて引き伸ばした複製画をツカミとして持ってきたのでしょう。 個人的にはツカミにならなかったのですが、 客を楽しませようという学芸員の心意気はすごく評価できる。いい美術館だと思いました。

『新訂万国全図』 亜欧堂田善

denzen_01.jpg denzen_02.jpg
フランスの表記が沸朗察。面白い。

『少女愛犬図』 亜欧堂田善

denzen_03.jpg
西洋の銅版画を、4倍ほどの大きさで墨によるブラシング(スパッタリング)を用いて模写したもの。 キモイ。 変な技法を試して失敗しているのが見て取れる。 お行儀の良い作品の多い田善の中では貴重な失敗作のような。

『動物図譜』 ヤン・ヨンストン

yonsuton.jpg

田善の作品以外も充実しまくりでしたよ、と。 ガラスケースの中に入ってて触れられなかったけど、 『動物図譜』 ヤン・ヨンストン - 1660年 - は、 古書萌え属性者にはたまらないものがありました。

『木村兼葭像』 谷文晁

buncho.jpg
谷文晁の作品の中では有名な方だと思う。 本物を見れて嬉しかったけど、 これは別に洋風画に何の関係も無いような気が。 西洋画の影響は何も無い絵だ。 文晁自身は日本の洋風画史を語る上で外せない人らしい、 とは先日マンガにした時に調べて知ったけど。

『千山万水図』 渡辺崋山

kazan.jpg
蛮社の獄で蟄居中に描かれた絵(左)。右の拡大画像は私による抜粋。 図録に添えられた解説によれば、中央に(日本の船ではない)帆船らしきものが見え、 地形が三浦半島を彷彿とさせるところから、 モリソン号事件を絡め、案じて止まない日本の対外政策と自身の心境を重ね合わせたのがこの絵である、 という説もあるとのこと。

それを踏まえて私が見て思ったこと。 もっとも手前(下段)の船は一枚帆で、日本の帆掛け船で間違いないだろう。 中段の手前寄りの船は中国の帆船に見え、 中段の奥側の帆船は西洋の帆船に見える。 で、もっとも遠くの上段の船影は、なんとなく蒸気船のように見える気がした。 『千山万水図』という画題でもあるし、 この絵一枚の中に日本・中国・西洋を描き、 蟄居でどこにも行けない我が身を空想で慰めたのかな……と。

と、いう解釈は自分の解釈を正しいと思うあまり、 見えないものを都合よく見てしまっている感もあるかな。

『馬入川富士遠望図』 司馬江漢

kokan.jpg
対外政策が急務となった松平定信が江漢ではなく子飼いの田善を重用したのは、 定信が江漢を下手だと思っていたという理由もあるらしいですね。

わかる気もする。この絵とかひどい。 右側の近景の鳥と岩場のスケールが明らかにおかしいし。 鳥のサイズがちゅん太((C)すげこま)みたいになってる。 で、右側を描き過ぎちゃってて本来の画題である左側の富士に視点が動きにくいし。 まー、絵の上手下手を言うと180度回転してすぐさま自分に突き刺さるので、 あんまり人のことを言えないんだけど。

しかし、江漢の絵には天然の持つ変な凄みがあって、 今なお高く評価されているのは、単に日本発の腐食銅版画に成功したって功績だけではないと思う。 田善よりは下手なんだけど、存在感では本展に出品されていた2作だけで田善に匹敵するものがありました。

『上総九十九里地引網大漁猟正写之図』 昇亭北寿

hokujyu.jpg
江戸時代にポリゴン表現が。

『大日本金龍山の図』 亜欧堂田善

denzen_04.jpg
で、これですよ。 以前に板橋区美術館の 『日本洋風画史展』 でも見た(というか、その展覧会で初めて亜欧堂田善を知った)のだけど、 良いものは何度見ても良いというヤツで。

鎖国の中、司馬江漢が腐食銅版画に成功してから20年で西洋と同レベルまで追いついた田善の実力すげー!! というか。 しかも、本格的に画業を始めたのは40代後半になってから。 伊能忠敬と並ぶ晩学の天才。そこにシビれるっ!アコガれるぅーっ!!

denzen_05.jpg
原版を見ることができたのに大感激。図録には残念ながらモノクロで収録されていたので、 レタッチでスキャンした画像を銅板っぽい色にしてみました。

図録

買いました。このエントリの画像はすべて図録からスキャンしたものです。 お値段は2500円。 妥当だと思うけど、ソフトカバーでいいからもっと安ければ嬉しかった。 あと、『新訂万国全図』は16枚すべてを原寸で収録して欲しかった。

余談

denzen_06.jpg
白人女性から質問されました。この絵の刀を指さしながら、
「コレハ、カタナ、デスカ?」
と。
「そうですよ」
と答えたものの、よっぽど (゚Д゚)ハァ? という顔をしてしまったらしく、
「アリガトゴザイマシタ ドウモ スミマセン」
と言いながら恥ずかしそうに逃げ去っていった。悪いことをした。

- アフィリエイト広告 -

『佐竹曙山 画ノ用タルヤ似タルヲ貴フ』

ad_image
  • 著者:成瀬不二雄
  • 出版:ミネルヴァ書房
  • 税込価格:¥2,625 (本体 : ¥2,500)

Amazonで詳しく見る | bk1で詳しく見る


.

Powerd by rNote 0.9.7.5 / Copyright : 桝田道也(MASUDA mitiya) 1997- all right reserved.