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感想文/マンガ『夕凪の街 桜の国』 | 04.10.14 (木)

『夕凪の街 桜の国』

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  • 著者:こうの 史代
  • 出版:双葉社
  • 税込価格:¥840 (本体 :¥800)

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帯の推薦文に、みなもと太郎先生が次のようなコメントを寄せている。
「実にマンガ界この十年の最大の収穫だと思います」(後略)
年季の入ったマンガ読みがここまで言っている。どうして無視できようか。

ちなみに自分(桝田)は、『夕凪の街』雑誌掲載時に読み逃してしまったクチ。 『桜の国』掲載号は買えたのだけど。 だから単行本を楽しみに待っていた。 再録も読まずに我慢した(楽しみは後にとっておくタイプの人間なのだ、自分は)。

朝イチで近所の本屋にて購入し、矢も盾もたまらず電車内にて読みふけった。 たとえ電車内だろうが号泣する覚悟で。

読み終えた。読み終えた時点では泣けなかった。 カタルシスを感じて体に電流が走ることも無かった。 つまらなかったわけではない。むしろ久々に没頭して読んだ。 だけど、泣けなかった。正確に言えば、
「さあいよいよ泣くぞ」
と身構えた矢先に物語が終わってしまい、とまどってしまったのだ。

『夕凪の街』は昭和30年の広島の下町(スラム街と言った方が近い)に住む、 一人の被爆女性の恋と生と死の物語だ。

誰もあの事を言わない いまだにわけが わからないのだ
わかっているのは「死ねばいい」と
誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ
(↑作中より引用)

声高に反戦を叫んだりはしない。 あの戦争を忘れないようにしましょうとアピールしているわけでもない。 ただ、一人の女性を通じて「ヒロシマ」とはなんだったのかが描かれている。 あとがきで作者は
>このオチのない物語は、三五頁で貴方の心に沸いたものによって、はじめて完結するものです
と書いている。

言われるまでもなく、唐突な幕切れで放り出された僕は本を閉じて
「なぜ泣けなかったのか」
考えてみた。 語られなかった行間と物語の帰結に思いを馳せた。 自分の脳内で物語が補完されたとたん、 不意に声と涙を漏らしそうになった。 電車の中でなければ泣いていたと思う。

これまでそれなりに色々なマンガを読んできたが、 こういう形で涙腺を刺激されたマンガは他に無かった。 これから幾度となく読み返そうと思う。

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