ノンフィクション:『銃・病原菌・鉄』感想

2000 年の話題の本『銃・病原菌・鉄』を 15 年後に読んで、あまつさえ感想を書くやつ>俺

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) 文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
ジャレド・ダイアモンド
草思社
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文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) 文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
ジャレド・ダイアモンド
草思社
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興味はあったけど、けっこう高い本だから、まずは図書館で借りて読んで……と思ったらずっと貸し出し中で、予約するほどでもなかったので
「運良く貸し出し中じゃない」
のを待ってたら 2015 年までかかったという話。

しかも、感想を書こうかという。どこに需要があるんだか。まあ、文庫が出たのが 2012 年らしいから、書いてもいいか。

概要(引用)

なぜ人類社会はこれほど異なった発展の道筋をたどったのか。世界の地域間の格差を生み出したものの正体とは何か。 この壮大な謎を、1万3000年前からの人類史をたどりつつ、分子生物学や進化生物学、生物地理学、考古学、文化人類学などの最新の研究成果をもとに解き明かしていく。

  3分で読める【名著】銃・病原菌・鉄~何故ヨーロッパ人が世界を征服できたのか~ – Togetterまとめ
  http://togetter.com/li/190962

最近、この本をトンデモ呼ばわりしてる匿名サイトの書き込みも見ましたが。

目次(引用)

    • 上巻
      • プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの
      • 第1部 勝者と敗者をめぐる謎
        • 第1章 一万三〇〇〇年前のスタートライン
        • 第2章 平和の民と戦う民の分かれ道
        • 第3章 スペイン人とインカ帝国の激突
      • 第2部 食糧生産にまつわる謎
        • 第4章 食糧生産と征服戦争
        • 第5章 持てるものと持たざるものの歴史
        • 第6章 農耕を始めた人と始めなかった人
        • 第7章 毒のないアーモンドのつくり方
        • 第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか
        • 第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか
        • 第10章 大地の広がる方向と住民の運命
      • 第3部 銃・病原菌・鉄の謎
        • 第11章 家畜がくれた死の贈り物
    • 下巻
      • (承前)第3部 銃・病原菌・鉄の謎
        • 第12章 文字をつくった人と借りた人
        • 第13章 発明は必要の母である
        • 第14章 平等な社会から集権的な社会へ
      • 第4部 世界に横たわる謎
        • 第15章 オーストラリアとニューギニアのミステリー
        • 第16章 中国はいかにして中国になったのか
        • 第17章 太平洋に広がっていった人びと
        • 第18章 旧世界と新世界の遭遇
        • 第19章 アフリカはいかにして黒人の世界になったか
      • エピローグ 科学としての人類史

    読了度・読了日

    • 読了度:上巻はほぼ通読。下巻は後半からななめ読み
    • 読了日:2015-06

    上巻は面白く、納得もいった。ただ、上巻の半分もいかないうちに本書の主張が
    発展の差の原因は人種による優劣じゃないよ。ないったら、ないよ。完全否定だよ。住んだ場所による有利・不利が理由のほとんど。あとはちょっとしたマッチングの運」
    であって、あとはその地域による有利・不利を細かく解説してるだけだとわかったので、下巻はちょっと読むのが面倒になって半分ナナメ読みになった。

    上巻のうちは農耕・牧畜が始まるまで…つまり文明が誕生するまでの発展の差が中心。下巻になってから……文明が誕生してからの発展の差が主題になると、どうも論理の展開がご都合主義的にも感じられた。

    たとえば、部族社会においては全員が顔見知りなので、争いが起きても双方の親類・関係者が説得して戦争にはなりにくい、とか。しかし、同じ本の別の章で、小さな部族社会で殺人が起きてることを書いてるのよ。親類は仕事しろよwww

    若干、著者がそういう原始文明的な社会を理想化してる感がいなめなかった。首長社会以前の数百人レベルの社会は持てるもの・持たざるもののない平等な社会である、とかね。

    人間でない猿の社会にすらボスがいて、群れの中に持てるもの・持たざるものが確認できるのに、原始人類社会にそれが無かったなんて、生物学者が言っちゃうかね?

    タイトルの『銃・病原菌・鉄』はヨーロッパ人が新大陸において優位に立てた理由を象徴してるだけで、一万三〇〇〇年に関与するキーワードではなかった。つまり、「タイトルは釣り」だった。

    本書を読んで、釣りでなくまっとうに人類史の一万三〇〇〇年に関与する優劣を決めたキーワードを選べとすれば、私なら『距離・家畜・資源』とするかな。売れそうにない本だね。

    上巻の説得力の強さには圧倒される。中米の細さと密林がネックになって南北間で情報の伝播に難があり、それが新大陸の文明発展を妨げたこと。全世界の動物の中で、家畜にできる動物は限られていて、家畜化できる動物がいない地域もあったこと。サハラがアフリカの北部と南部を分断していたこと。いちいち面白い。

    しかし、下巻からはどうもね。QWERTY 配列が生まれた理由をアームの衝突を防ぐためとしていたり。それは通説ではあるけど、本書の書かれた 1998 年でさえ諸説あったと思う。慎重な著者だったらその話は避けたはずだ。そうした隙がところどころにあるのは否めない。

    今となっては遠い昔のことで、本当の理由はわからなくなっているが、シュメール人が一二進法を使うようになったのも、おそらくたいした理由ではなかったのだろうなんてことを書いてるのにも驚いた。

    理由を書き記した粘土板でも見つからない限り、そりゃ推測の域を出ないけど、これに関しては容易に説得力のある「たいした理由」が推測できる。

    シュメール人の暮らしていた地域、本書の用語で言えば「肥沃三日月地帯」は雪解け水によって定期的にチグリス・ユーフラテスが氾濫を起こす。したがって「肥沃三日月地帯」暦学が早くから必要だった。

    シュメール人は一年のあいだに月の満ち欠けが 12 回あることをほどなく発見しただろう。月の満ち欠けはだいたい 30 日だった。ということは一年はだいたい 360 日だ。正確にはちょっと違ったが、だいたい合ってた。したがって、12 と 30 の最小公倍数の 60 を規準にするのは理にかなっていた。

    60 は2と3と4と5の最小公倍数であり、約数が多くて便利だったため 60 進法を採用したという説もある。そういう面もあっただろう。採用の理由を一つに絞ることはない。

    つまり、シュメール人が採用したのは 12 進法ではなく 60 進法だったし、「たいした理由」があったと言うことができる。こんなポカを科学畑の著者がやるのは、ちょっとなあ……と思う。

    さすがにトンデモは言い過ぎとしても、暖かい地域に住む人は怠け者?そんなわけねーだろ、と通説を論破してた上巻に比べると下巻は世界史の通説をそのまま採用してる部分が多く、あれれー?な印象であった。それでも本書の主論である「人類の発展の差の要因に人種の差はない。地域差でほとんど説明できる」という点には完全に納得できた。

    根が生物学者であるせいか、本領が発揮されてるのは文明以前のクロマニヨン人が文明人になるまでのくだりだ。著者のジャレド・ダイアモンドは有名な『人間はどこまでチンパンジーか?』の著者でもある。有名な…と書きつつ私は読んでないけど。

    論拠の出典がちゃんと載ってないのは翻訳版を出した出版社の問題らしく、文庫版ではちゃんと載ってるとのこと。

      Illegal Translation of Jared Diamond “Guns, Germs and Steel” Further Readings(Jared Diamond “Guns, Germs and Steel” Further Readings を勝手に訳したぞ。)
      http://cruel.org/diamond/

    あと、こんなのも。

      ダイアモンド『銃、病原菌、鉄』2005年版追加章について
      http://cruel.org/diamond/GGSaddition.html

    さて。Further Readings 勝手訳を読んだら、『人間はどこまでチンパンジーか?』を読もうかな。専門外の分野についてはともかく著者の本来の分野に関しては信頼できると判断したから。

    文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) 文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
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