東京国立博物館の特別上演 VR作品『熊本城』 を見た

映像はしょっぱかったけど、行ってよかった東博

スペシャル|熊本城復興支援 特別上演 VR作品『熊本城』(上演日時にご注意ください)|TNM & TOPPAN ミュージアムシアター
http://www.toppan-vr.jp/mt/special/index.shtml

ということで、見てきました。

実は私はお城好きにあるまじき態度かもしれませんが、震災にともなう熊本城の被災をそれほど悲しんでなかったりします。 残念ではあるけれど、人災ではなく天災なので、こればっかりはしかたがない。耐震のために石垣にコンクリを注入するわけにもいかん ……という割り切った態度。

そんなもんだから、この上演を見ることで熊本城を支援したいという気持ちはそれほどではなく、単に、せっかくだから見ておこうか、くらいで見に行きました。

ちなみに、この作品は元々、熊本市の桜の馬場 城彩苑で上演するために作られた VR 作品で、震災後に特別に作られたものではなく、いずれ桜の馬場 城彩苑で再び上演されるようになるものです。

上演場所は東京国立博物館 東洋館のB1。東博の他の建物にくらべて地味な東洋館。
東京国立博物館 東洋館

というか明らかに寂れてて、ディズニーランドの不人気アトラクションに入ってしまった的な気まずさが。
東京国立博物館 東洋館

上記サイトで注意書きがあるように、17 時の上演は平日でも混雑中。
シアター入場パス

17 時前に到着したけど、18 時の上演まで待たねばならなかった。このようなパスを渡されて、東京国立博物館の敷地内で待たねばならない。他の展覧会のチケットを買わなくても池田家の門やユリノキの巨樹など、見所は多いから時間を潰すのは苦じゃないけど、昼食をろくにとってなかったので、レストランが 17:00 で閉店してたのが辛かった。

この入場パス方式は、改善の余地があるのではないか……と思った。

ちなみに 6/23 の時点では混雑してるのは 17:00 の上演だけで、18:00 の上演は空席が少しあった。

CGがしょぼい。しょぼい理由もようやく気がついたけど、それでも色々と不満

凸版の VR ミュージアム作品を見るのはこれが3回目です。

初めて見たのは『プランタン=モレトゥス博物館展』で、これはかなり楽しんだ記憶があります。あまりの没入感に座席が動いたように錯覚し、のちのち、その錯覚を正しい記憶だと混同してしまったくらい。

二回目は江戸東京博物館だったと思うけど『VR 江戸城』で、CGが非常にお粗末に思えた記憶があります。10年遅れというか、リアルタイムレンダリング並みのクオリティじゃねーか……と落胆しました。これはあるいみ間違いである意味正しく、並みも特盛りもない、本当にリアルタイムレンダリングだったからなのですが、この点については後で書きましょう。

そして、このVR熊本城。江戸東京博物館の映像ホール(ハイビジョン)にしろ、東京国立博物館のVRシアター(4K)にしろ、印刷博物館のVRシアターの「半径8メートル、水平方向の視野角が120度、高さが4メートルもあるカーブ型スクリーン」には及ばないので、没入感には欠けました。3D酔いしにくいというメリットはあったけど。

東京国立博物館のVRシアターは左右の壁面にもプロジェクションマッピングで映像を表示できるけど、VR熊本城はそれに対応した作品ではなかったようです。

『VR熊本城』の前に、熊本市長の挨拶の映像が入りました。これが3DCGでVRだったら面白いけどなあ……と思いました(不謹慎)

作品は終始、一人称視点の映像が上映されて、それをナビゲーターが解説するという形式。解説は一般人向け。城マニアにとって目ぼしい情報はさほどありませんでした。

そんなわけで、私は話はろくに頭に入らず、もっぱらCGにのみ心を奪われていました。

VR江戸城よりはマシになってたけど、相変わらずPS2のリアルタイムレンダリングレベルの映像。 マシなのは、石垣のテクスチャが豊富な本物の写真を使えたからというだけのことであって、模型のような地面や屋根や漆喰と合ってないこと、はなはだしい。

ただしモデリングは当然正確。この3Dモデルとテクスチャを公開すれば、どっかの海外オタが Source エンジンにぶっこんで、はるかにクオリティの高い映像作るだろうに……と、イライラしながら見る私。

板ポリゴン複数枚を円柱にくっつけただけの、セガラリーレベルの樹木。アップになるとボケボケになるテクスチャ。

さすがに天守台の石垣は面取りしてるように見えたけど、二の丸や三の丸の石垣は面取りされておらずバンプマッピングもかかってないように見えた。まるでペーパークラフトのような石垣のエッジ……。

本丸御殿内部のCG映像。このクオリティじゃなー……
VR熊本城(ロビーのモニターの説明)

本丸御殿の内部で家臣一同がずらっと並ぶシーンも屏風絵から抽出した2D侍を板ポリゴンにして並べる始末で、
「パラッパラッパーじゃねえんだからさー」
と失笑してしまいました。

CG監修も必要だったのでは……
VR熊本城(ロビーのモニターの説明)

リアルに見えることと、細部までハッキリ見えることは、時に相反します。

せっかくの再現CGなのに
「影になってて見えなかった」
だの
「襖絵・屏風絵が経年の汚れで煤けてる」
だのでは、リアルであっても、それは望まれないリアルでしょう。

しかし、せっかくプリレンダムービーなんだから……こんなリアルタイムレンダリング並みの映像じゃ……

と思って、はたと気が付きました。ナビゲーターの女性はコントローラーで操作しているということに。つまり、これはリアルタイムレンダリングだと。

ああ。

ならば、PS2並みなのも、納得がいきます。

運用が始まったのが 2005~2007 だと思うけど、進化の激しいPCやゲーム機と違って、官のハードウェアは10年単位で運用されるものだから。

そう言えば、はじめて見た凸版のVR作品、『プランタン=モレトゥス博物館展』で 360℃ 映像がわずかにカクついていたので、
「あ!これリアルタイムだ!操作できるんだ!すげえ!」
と気付いたのでした。忘れていました。

そんなわけで、VR江戸城やVR熊本城のCGがちょっと残念レベルな理由はわかりました。

わかったのだけれど、わかると、それはそれで新たな不満がでてくるのでした。

VR熊本城は実写+CGがよかったのでは?

CGで復元された本丸御殿。よく頑張ってるとは思ったけど、リアルタイムレンダリングの限界もあって、現実世界で復元された本丸御殿には及んでいなかった。

『プランタン=モレトゥス博物館展』のVR作品のように、360℃ムービーが使えるんなら、適材適所で良かったのではないか。現実世界の復元本丸御殿では立ち入りできない部分にカメラが入り、その実写360℃映像がVRシアターで見られたなら感動は大きかったと思う。有事の際の隠し通路とか。

城の外観も、クアッドコプターで撮った360℃映像に3DCGを合成ということはできなかったのか。簡単に言ってるけど、たぶん大変だろう。でも、そういう映像だったら私も絶賛していたはずです。

 

リアルタイムレンダリングである理由が活用されてない

一般人にはリアルタイムレンダリングとプリレンダリングの違いなんかどうでもいいんです。

なんか N64 と PS1 みたいな話になってしまいますが。単にムービーとして流すなら、そんな技術的な問題に配慮して見ることのできる心優しき観客なんてほとんどいなくて、
「なに?このしょっぱいCGはwww」
てなるだけなんですよ。

じゃあ、なんで凸版のVRシアター作品はリアルタイムレンダリングなの?というと、

印刷博物館:施設案内_VRシアター
http://www.printing-museum.org/floorplan/vr/

によれば、

  • 映画やテレビと違い、自由なシナリオを何通りでも作る事ができる。
  • CD-ROMやWebと違い、あらゆるシーンを好きな位置からみることができる。
  • ゲームがゴールに向かって進むのとは違い、ストーリーの過程を「読む」、「味わう」、「観賞する」ことができる。
  • あたかも映像の中に入り込むかのような「臨場感」、「没入感」を体験する事ができる。
  • 実際に体験できるので、強烈な印象や深い意味につながる。

……からであって、インタラクティブなユーザー体験のためには、プリレンダムービーじゃだめだったわけです。

そりゃまー、そうだよなー、と思う。没入感があるといっても全編、一人称視点で進むからというだけであって、 べつに飛び出す立体映像というわけでもないから。

ところが、せっかくのインタラクティブ性が活用されているかというと、まったくそんなことはなくて。

VR江戸城もVR熊本城も、決まったタイミングで決まった通りに操作して、決まった説明をするだけ。

質問タイムもなければ、観客にどこか見たいところはないか、聞くこともない。

そりゃまー、そうだろう。観客の方もそういうのに慣れてないし、ナビゲーターも慣れてない。変な事をしてトラブルになって、クレーム処理、運用コスト倍増……と考えるだけで頭が痛い。

ハコモノ行政的には作っただけで放置できるコンテンツこそ最高であって、インタラクティブ性なんか必要としていない。

凸版としては、せっかく作ったものが、ただのループ映像垂れ流し機械にされるのも困るから、ナビゲーターの解説と操作という点は外せない。

結果として観客は、インタラクティブに操作できるけど、その機能はほぼ黒歴史にされてる、プリレンダでやればいいのに、ガイドも録音でいいのに、なしょっぱいムービーを見ることになっているわけですね。

以上は、たった3作品(『プランタン=モレトゥス博物館』、『VR江戸城』、『VR熊本城』)から導いた感想です。 もしかしたら私の見ていないVRシアター作品で、インタラクティブ性を活用してる作品があるのかもしれない。

ただ、現状として私の見たものではこうだったし、そういうわけで『VR熊本城』は、熊本城を支援する気持ちがないなら、あまりオススメできないかな……と思いました。

それでも、行ってよかったと思った理由

VR作品『熊本城』(上演日時にご注意ください)とある通り、『VR熊本城』の上演は夕方から。じゃあ、日中は何をやってるの?というと、これが

ミュージアムシアター:VR作品「洛中洛外図屏風 舟木本」
なのですね。

チラシには「春だ 桜だ 国宝だ!」と、「〇〇だ ××だ △△だ!」式の頭の悪いキャッチコピーが踊ってて、大変好感が持てます(ほめてるんです。このキャッチコピーを使う人間はアホだけど絶対に憎めないタイプ)

だもんだから、東京国立博物館VRシアターのロビーには洛中洛外図屏風 舟木本の複製品が置いてあって、触らなければ極限まで近づいてなめるように見ることができるし、フラッシュ焚かなければ撮影も可だったんですよ!!!!!きゃほーい!!!

紙の本も e国宝もかなわない、実物大複製品の圧倒的なユーザビリティ!!!!最高でした。

あ、熊本城の被災をそれほど悲しんでないとは書きましたが、それは「塞翁が馬」的な意味でのことです。熊本城は好きな城のひとつであり、もちろん復興を望んでいます。

『VR熊本城』の観賞料が全額寄付されるので、ささやかながら支援できたことを嬉しく思います。

(正直、VR熊本城をウェブで有料作品として公開して、その売上げを全額寄付した方が高額が得られると思うのですが、本来、桜の馬場 城彩苑への観光客誘致のためのコンテンツなので、そうもいかないんでしょうね……)

洛中洛外図屏風の二条城。
tohaku_06.jpg

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